「針供養(12月のはりくよう)」(はりくよう)。針供養とは、折れたり錆びたりして使えなくなった針を供養する行事です。
針に感謝の気持ちを持ち、針仕事の上達や無事を祈ります。
針供養は、12月8日と2月8日の「事八日(ことようか)」に行われることが多く、地域によって異なります。
2025年の2月の針供養
針供養の由来は、中国の古い慣習に基づいています。日本での針供養の行事は、中国から伝わった「社日」の風習が元となっています。
中国の「社日」の慣習とは?
中国では、「社日(土地神の祭日)に針線(針仕事)を止む」という風習がありました。
社日は、農耕や土地に感謝する日であり、この日に針仕事を休むことで針への感謝を表していたとされています。
日本での針供養の展開
日本では、江戸時代に淡島明神の功徳を説き歩いた「淡島願人(あわしまがんにん)」の影響により、針供養の慣習が広まりました。
淡島明神は、主に縫い物や裁縫の守護神とされ、女性や針仕事に携わる人々から信仰を集めました。
針供養の目的と精神
針供養は、使い古した針や壊れた針に感謝を捧げる行事です。同時に、針仕事の上達と安全を祈る文化として、日本に根付いています。
針を豆腐やこんにゃくなど柔らかい食品に刺して供養するのは、針に「やすらぎ」を与える意味が込められています。
富山県・石川県での「針歳暮」
富山県や石川県では、針に触れないようにする風習が残り、「針歳暮」と呼ばれています。
この風習では、饅頭や大福を食べたり、知人に贈ったりすることが行われています。また、富山県では12月8日に針歳暮が行われることが多いですが、この日は嵐になる特異日であり「針歳暮荒れ」と呼ばれることがあります。
長野県佐久地域の針供養
長野県佐久地域では、2月8日に針供養が行われます。
この地域では、使えなくなった針を豆腐に差し込み、神棚に上げて拝むか、縁の下へ投げ入れるという風習が見られます。
集落ごとに異なる形で針供養が行われており、地域に根付いた伝統として続いています。
現代における針供養の実施状況
現在では家庭で針仕事を行うことが少なくなり、針供養を行う機会も減少しています。しかし、服飾に関わる分野では依然として針供養の風習が受け継がれています。
特に和裁や洋裁の教育機関や企業では、針への感謝と針仕事の安全を祈願する行事として続けられています。
また、かつては東京ディズニーランドでも針供養が行われていた例があり、特定の業界や団体で行われる行事として注目されています。